2010年12月11日

問題はそれだけ?

10日、原子力安全・保安院は再処理工場の「運転改善計画」が妥当として、B溶融炉での試験再開を容認する方針を決めたという。ここで10月5日、美浜の会の呼びかけで、全国の人たちが集まり、経済産業省へ申し入れに行った時の「要望・質問書」の抜粋を読んでください。

=============================

「改正報告書」によれば、現在のアクティブ試験は日本原燃による2008年6月11日付「安定運転条件報告」に基づいています。この安定運転の考えは同年6月30日の原子力安全・保安院報告「『安定運転条件報告』について」で要約・定式化され、同日の核燃料サイクル安全小委員会に提案され了承されています。そこでは、まずA溶融炉の試験において「安定した運転状態の維持」及び「長期に運転状態を維持」について確認し、その「確認が得られた後」に同様の過程をB溶融炉で実施することと明記されています(4頁)。この6月30日小委員会承認の方針に沿って同年10月に溶融炉試験が再開され、それが白金族堆積のために中断した状態に現在はあるわけです。それゆえ、再開試験はその中断した時点に立ち戻るのが当然の筋だと思われます。

 ところが、今回の「改正報告書」(及び9月10日社長記者会見)では、次のような方針が出されています。以下に私たちのコメントを付けて列記します。
① まず、低模擬廃液を用いた化学試験を行うとのことです。
  しかし、化学試験はアクティブ試験の前のウラン試験の前段として、すでに終了したはずの試験です。しかも社長記者会見によれば、この化学試験はほぼ2012年3月までかかると見込んでいます。つまり、今後の大部分の時間をアクティブ試験ではなく、その前々段としての化学試験に費やすことにしています。

② 化学試験の後に入るアクティブ試験(実廃液試験)は、A溶融炉ではなく、まずはB溶融炉で行うとしています。
 しかし、その理由は明記されず、ただ「まず実廃液の影響を受けていないB系列で実施する」と示唆されているだけです(25頁)。明らかに2008年6月30日小委員会了承内容に反する方針が、まるで当然のことのように報告書に書かれ、記者発表されていることは非常に不可解なことです。核燃料サイクル安全小委員会の存在を無視する行為ではないでしょうか。

③ 社長記者会見のスケジュールによれば、A溶融炉内残留物の除去作業はずっと後の段階に追いやられています。
 試験がうまく行かないことの原因を炉内の実態から探るために必要なはずの作業がなぜ後回しにされているのか不可解なことです。まずはA溶融炉がなぜ停止せざるを得なかったのかという実態に基づいた総括を優先させるべきではないでしょうか。

④ 原燃の方針によれば、アクティブ試験が中断した2008年10月の状態、つまりA溶融炉で不溶解残渣廃液を用いた試験に立ち戻るのは最後の段階になっています。
 しかし、「実廃液の影響」を受けているという理由で後回しにしたA溶融炉試験がうまく行かなければ、仮にB溶融炉試験が順調に終了したとしても、そこでアクティブ試験自体が破綻することになるわけです。

 日本原燃の「改正報告書」には、なぜ白金族が堆積するのかを分析した総括的考察が書かれていません。対策として登場するのは、温度計の増設と定期的に洗浄運転を行うことだけです。しかし、温度管理には二面があり、日本原燃もいったん高温にした炉底温度をまた低温に戻すなど、実に行き当たりばったりの対症療法をしているだけです。

=============================
要するにこの対処療法を容認したわけです。
こんなことを繰り返していても問題の解決にはならないし、一番の問題は原燃という会社自体の体質ではないでしょうか?そしてこれをよしとする原子力安全・保安院の在り方ではないでしょうか?

デーリー東北『固化体試験の再開容認 保安院、改善計画「妥当」』←クリック